大阪高等裁判所 昭和57年(ラ)116号 決定 1982年5月10日
国籍 韓国 住所 大阪市北区
抗告人 金真己
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一 本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。
二 当裁判所の判断
本件申立事件について、日本国の家庭裁判所に裁判権はないとする原審判の判断は正当である。
したがつて、原審判は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 石川恭 裁判官 首藤武兵 蒲原範明)
抗告の趣旨
(1) 原審判を取消す。
(2) 抗告人の名を「真希」と変更することを許可する。
との裁判を求める。
抗告の理由
一 原審判は、氏名は人格権の問題であるからその公簿上の表示は当該本国(韓国)の裁判所に管轄権があるとして申請を却下したが、抗告人のように日本で生まれ、日本に定着し、日本人同様の生活を送つている者に対し、人格権の問題という理由だけで何故わが国の裁判権を否定するのか理解できない。人格権の問題なら抗告人のような者についてはむしろ逆に定着しているわが国に裁判権を認めてしかるべきだと考える。
二 抗告人は、さきに本国である韓国の済州地方法院に改名許可を申請したが、同法院は昭和五七年一月一二日、日本国において発行されている抗告人の外国人登録証に「真己」と記載されているから改名理由はないとして許可申請を却下した。ところで同決定はまず外国人登録の段階で改名されるべきことを示晙している。
それならば、まず日本国において改名許可を得ることができなければならない。
三 なお、「真己」は「己」(「おのれ」)の字のため世間で今まで男性ととられて不便を受けて来たので是非日頃から通名として使用し誤解のおそれのない「真希」に変更したいと考える次第である。